嘉納治五郎と100年レガシー

世界とスポーツでつながる国際協力のかたち

スポーツ愛好家たちは知っている。スポーツの持つ不思議な力を。国際/ 国内協力従事者やサポーター達も知っている。ヒトとヒトが支えあうことの重大さを。そして、いま、両者の利点を併せ持ち、明日を創造する新しい社会のあり方として「スポーツを通じた開発」という考え方が生まれ、ヒト、地域、国づくりに役立てられ始めている!!

スポーツを通じた開発とは

スポーツを通じた開発は、一般的に国内で行われる「スポーツを通じた開発(DTS: Development through Sport)」と 国際で行われる「スポーツを通じた様々な開発への試み(IDS: International Development through Sport)」に大別することができます。

DTSとIDSに関する根源的要素としては、①スポーツそのものを開発する「スポーツ開発」と②スポーツを手段として課題解決に取り組む「スポーツによる開発」、そして、③スポーツを触媒として情報を共有する「スポーツを通じた開発」の全てを合わせもった開発手法、分野、概念と表現できます。

DTSの活動は、各国で様々な取り組みが行われていますが、「地域でのスポーツ青少年団のゴミ拾い」から「スポーツによる企業人材の開発」、そして「総合型地域スポーツクラブによる地域コミュニティーの再生」などが、それにあたります。

IDSの活動には、「途上国のスポーツ団体支援」、「青年海外協力隊が各国で行う体育・スポーツ関連支援」、そして「国際スポーツ・チャリティー・イベント」などが挙げられます。

スポーツ × 開発 × 平和 Sport for Development & Peace

平成26年度スポーツ振興くじ助成事業

スポーツが持つ人と人を結びつける力をどのようにして社会に役立てることができるでしょうか。

そうした問いに、現在、スポーツ界、学術界、企業、NPO・NGO、政府機関、国連機関、メディアなど、幅広い分野から関心が寄せられています。
個人や地域、ひいては国や多国間の様々な課題に対して貢献しうるスポーツのあり方を、ここでは「開発と平和のためのスポーツ」Sport for Development & Peace と呼び、その中から代表的な8つの領域を紹介します。

  • Environment
    環境の持続性を確保することは、世界が抱える「地球規模の課題」のひとつです。一見してこのような問題とは無縁のスポーツですが、人々の注目を集めるスポーツイベントなどを通して環境問題に関わる様々な情報や課題について効果的にメッセージを発信することができます。また、スポーツイベント自体にもより持続可能な運営方法になっていくことが期待されます。
  • Peace
    今もっとも熱い議論がなされているのが平和構築におけるスポーツの役割です。紛争解決に関する研究者であるジョン・ポール・レデラックはスポーツで作る身近で安全な社会空間が平和構築に有効であることを強調しています。21世紀の平和構築は紛争が勃発する前からスポーツ交流というかたちでスタートしています。そして紛争中・紛争後を含めたすべての段階においてスポーツが対立する民族同士の理解や紛争で被害を受けた人々の緊張や暴力、トラウマといった問題の緩和を促します。
  • Gender
    ジェンダーとは生物学的な性差だけではなく、社会や歴史の中で作られてきた男女の役割や関係性をさす言葉です。現代においても多くの女性やセクシャルマイノリティーが社会・政治・経済・法制・教育・身体など生活の様々な場面において不利な立場におかれています。
    こうした状況を改善するための手段として、スポーツを通じた社会参画や、他者理解などに注目が集まっています。
  • Education
    未来を担う青少年の教育は、よりよい社会を構築するために必要不可欠であり、積極的に取り組むべき課題の一つです。教育現場におけるスポーツは、青少年の知性・社会性・感情・身体能力等を包括的に育み、バランスのとれた一個人の成長を促します。それぞれの地域のニーズに合わせて、人材育成やスポーツを楽しむための環境の整備など、スポーツの教育的側面をより活用するための工夫が求められています。
  • DisasterRelief
    災害支援の現場において、スポーツは被災地におけるコミュニティの再生やストレスからの解放を促進ために有効であり、人々が社会的精神的な健康を取り戻すための手段となります。
    栄養改善、保健と衛生環境の提供、経済機会の創出等と遊びやレクリエーションなどを含めた広義のスポーツを組み合わせた支援活動を実施することで、より大きな効果が期待されます。
  • DifferentAbilities
    障がいのある人にとっても、スポーツへの参加は生活の質向上と運動能力改善を図るために効果的です。しかし、開発途上国では障がいのある人がスポーツに参加できる機会がごく限られています。また先進国においても意識の向上や施設の改善が求められています。開発途上国・先進国の両方で、すべての人が各々の壁を乗り越えてスポーツに親しむ機会を作ることが大切です。
  • Health&Welfare
    スポーツは人々の健康的な生活を促進し、生活習慣病のリスクを低くします。医療情報が乏しい開発途上国においては、スポーツ大会やイベントでの集客を利用し、伝染病などに対する医療理解を高めるための情報発信キャンペーン等が使われています。日本のように高齢化が進む社会では、高齢者の健康維持におけるスポーツの役割も注目されており、また、鬱病やストレス疾患の状態から精神的健康を取り戻すためにもスポーツが役立つと考えられています。
  • Economic
    Development
    開発途上国の経済発展においてもスポーツは広く貢献しています。スポーツ大会の開催によって観光や関連産業の発展が促され、それに伴う雇用機会の創出やライフスキルの向上、インフラ整備などが期待されます。しかし近年では、スポーツが経済に与える良い影響が積極的に評価される一方で、その限界についてもいくつかの事例が蓄積されており、それをどう乗り越えていくかが今後の課題となっています。

スポーツを通じた国際開発の歴史

言わずと知れたスポーツの国際的組織「国際オリンピック委員会 (IOC)」は、1983年からスポーツを通じて世界の健康と幸福な社会を目指す「Sport For All (SFA)」を宣言し、隔年で SFA世界会議(World Conference on Sport for All) を開催しています。また、世界の多くが産業開発途上国(途上国)であることから、オリンピック・ソリダリティ というプログラムを通して途上国に対するヒト・モノ・カネの支援を行っています。

さらに「国際連合 (UN)」では、国際体育スポーツ憲章(1978)、子どもの権利条約(1989)を宣言するなど、スポーツの力を十分に理解した上での権利の向上を目指した活動を行っています。

その2つの世界的な組織が初めての競演を果たしたのが、1972年のミュンヘン五輪ですが、その後、両者による様々な取り組みが行われています。また、IDSの有効性が認められるようになった1993年以降には、「IOC傘下の各国際スポーツ連盟」と「UNグループ傘下の各国際協力機関」が次々と協力合意を締結し、とうとう2002年に「国連諸機関連携 平和と開発のためのスポーツ専門委員会」が発足します。2008年には、「国連平和と開発のためのスポーツ事務所 (UNOSDP)」を国連の公式組織として設置することとなり、国連に留まらず、爆発的に世界でのIDSを広げる結果を導いています。

DTS/IDSの盛んな国々

国旗をクリックすると各国のDTS/IDS情報をご覧いただけます。

DTS/IDS活動の担い手

「スポーツを通じた開発」の活動は、国連や国際NGO、有名なアスリートだけが行っているわけではありません。スポーツという身近な存在を通して様々な関わり方が出来るのもDTSやIDSの特徴だと言えます。立場に合わせて、各自の能力を発揮しつつ、支援提供者と支援享受者のつながりを得て、相互の気付きや発展を望めることができる活動であると言えます。

  • 教師

    教師
    スタディーツアーや青年海外協力隊などの機会を利用して、経験知を生かした体育授業・運動部活動などの指導法を伝える
  • 会社員

    会社員
    新古スポーツ製品や募金の提供。或いは、スタディーツアーやチャリティースポーツ大会への積極的な参加で実践する
  • スポーツ選手

    スポーツ選手
    社会貢献の一環として、各人の専門性を生かしたコーチング・クリニックや知名度を生かしたキャンペーンなどで貢献する
  • 学生

    学生
    学生ならではの企画力と実践力を生かしたイベントの開催。或いは、創意工夫のある運動機会の提供や手作り道具を提供する
  • 主婦

    主婦
    バザーやチャリティ・イベントなどを企画したり、人材として、DTSやIDSを手がけるNPOの補助を行うなどして実践する
  • ボランティア

    ボランティア
    専門性のあるボランティア組織に所属し、短期から長期まで、組織に応じて様々な補助業務を行う。DTS/IDSを深く知るための第一歩
  • インターン

    インターン
    将来的に本職としてDTS/IDSを実践しようと検討している人材にとっての登竜門。スタッフの業務を補助し、様々な参加者の調整役を勤めることが多い
  • 団体スタッフ

    団体スタッフ
    企画・運営・調整のエキスパート。自身の能力を高めることで専門家への道を開くことも出来る。国連、JICA、NPO、企業等、幅広い分野でのDTS/ IDSを実践する
  • 専門家/研究者

    専門家/研究者
    研究・調査分野での協力を図り、効果的な事業運営のサポートを行うと共に、現場の人材が継続できる体制を提供する

このように、様々な関わり方が出来るのもDTSやIDSの特徴だと言えます。立場に合わせて、各自の能力を発揮しつつ、支援提供者と支援享受者のつながりを得て、相互の気付きや発展を望めることができる活動であると言えます。

ミレニアム開発目標(MDGs)に対するスポーツ貢献

2000年9月に開催された国連ミレニアムサミットでは、これまでの開発課題が熟考され、ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)という新世紀における国連の10カ年計画が策定されました。MDGsでは、貧困や飢餓の撲滅など、2015年までに達成すべき8つの目標が掲げられています。そして、明確な目的と指標も然ることながら、様々な手法が盛り込まれており、これまでの計画と一線を画した内容で構成されたMDGsには、DTS/IDSも導入されることとなりました。2010年9月の国連ミレニアムサミットでは、スポーツがMDGs達成にとって有効なツールであるとの決議がなされています。

[参考文献等]
  • UNOSDP Web-page [2011/12/14], “Why Sport"を翻訳・編集
  • 国連 国連ミレニアム開発目標報告2009を参照・編集

編集協力 : 山口拓・(特活)ハート・オブ・ゴールド理事

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